猫丸邸騒動記

猫よりも 猫らしくとや 猫の道

2015-04-01から1ヶ月間の記事一覧

流れ島流離譚 9

長い階段だった。 最初は気づかないほどの兆候だった。 それが、一段一段踏みしめるうちに、何かに足を取られる感覚が、いよいよ強くなる。 階段がやわらかな素材に変化したような、地面がゆっくりと揺れているような。 そのうちに、前を歩くシマナガシの後…

流れ島流離譚 8

様々の蔦の葉で彩られた門をくぐるなり、シマナガシが振り向くと、右手を胸のあたりに当て、両膝を軽く曲げながら言った。 「ようこそ」 溢れんばかりの既視感に包まれる。そのバレエの王子か道化者のようなポーズといい、その台詞といい。 「次の世界へ、で…

ベリホで上から通信

「新居は階段を千段上る」 Fからの新しいメールにはそう書いてあった。 引っ越すことになりそうだとは聞いていたが、千段というのは普通じゃない。もっとも、普通のメールなんか、来ないのはわかっているのだけれど。 「見晴らしがとてもいいので送ろう」 …