猫丸邸騒動記

猫よりも 猫らしくとや 猫の道

2015-03-01から1ヶ月間の記事一覧

「流れ島流離譚」もくじ

「流れ島流離譚」の話数が増えてちょっと読みにくくなってきたので目次を作りました。 タイトルをクリックすると新しいウィンドウが開きます。別のタイトルをクリックすると、最初に開いたウィンドウの中身が切り替わります。 流れ島流離譚について 流れ島流…

カスタードプリンのかなしみ

ここが嫌いなわけじゃない。 ただ、決定的に欠けているものがひとつだけある。それは、命と同じくらい大事なものなんだ。 少年はそう言ってうつむいた。 「花粉症っていうけどさ、私あれ、違うと思うんだ」「花粉が原因じゃないとかそういうこと?」「違う、…

流れ島流離譚 7

坂の勾配を感じなくなってきていた。 実際に平らな道なのか、感覚が麻痺してきたのかには確信が持てない。 見たことのない木ばかりで構成された森が続く。せり出してくる枝をシマナガシが時々器用に避け、時々片手でぽきりと折りながら足早に先を行く。どう…

流れ島流離譚 6

鼻侯爵に会った頃、私は毎日、仕事からの帰路を誰かにつけられていた。 その時は、家も間近な、しかし最も暗い道にさしかかっていた。びくびくしながら、ポケットの中の防犯ブザーに手をかけ、早足で道を急いでいたところ、行く手を大きな影が塞いだ。つけて…

流れ島流離譚 5

猫の顔が近くまで迫ってくる。巨大猫に食べられる最期、というのはまあ悪くもないが、とりあえず今は避けたい展開だ。 考えろ、ここは奇妙奇天烈な世界なりに、何かしらの法則には従っているはずだ。 生えている植物だってふつうだし。 いや、よく見るとふつ…

流れ島流離譚 4

本当に驚いた時には声など出ないというが、その時の私は、声のかたまりが喉に詰まって息ができないのに近かった。 目の前の木の幹に浮かんだ猫の顔が消えたかと思うと、今度は隣、そのまた隣の木に。そして、『ふしぎの国のアリス』のチェシャ猫のように、笑…

百年の読書

百年という名の書店に行った。 吉祥寺にある古書店であるが、久々の古書店の雰囲気がとても心地よかった。 本がたくさんあるのは嬉しい。本が大好きだ。世の中にこんなにもたくさんの本がまだあるかと思うとぞくぞくしてくる。そんな感覚が、実に久しぶりだ…

流れ島流離譚 3

とにかく、鼻侯爵を追うことにする。 肩を組んで見下ろす巨人たちのような崖は、さすがによじ登るには厳しそうで、とかげや虫なら楽々と登るだろうなあ、とあまり役にも立たない想像をする。正確には、人間であっても身が軽ければ登れる高さだろうが、私の運…