猫丸邸騒動記

猫よりも 猫らしくとや 猫の道

掌編小説

焼いて食う

「いっそのことあいつ、焼いて食ってやろうと思うんだ。腹立つから」「何の話」「だからあいつだって、シノブ」 人をバーベキューに誘うなり、冬実は物騒なことを言う。「さすがに丸ごと焼くと気味が悪いし、だいたいみんなにバレちゃうでしょ。まずはバラバ…

ベリホで上から通信

「新居は階段を千段上る」 Fからの新しいメールにはそう書いてあった。 引っ越すことになりそうだとは聞いていたが、千段というのは普通じゃない。もっとも、普通のメールなんか、来ないのはわかっているのだけれど。 「見晴らしがとてもいいので送ろう」 …

カスタードプリンのかなしみ

ここが嫌いなわけじゃない。 ただ、決定的に欠けているものがひとつだけある。それは、命と同じくらい大事なものなんだ。 少年はそう言ってうつむいた。 「花粉症っていうけどさ、私あれ、違うと思うんだ」「花粉が原因じゃないとかそういうこと?」「違う、…